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あかしあのみち

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「歩いても歩いても」

遅くなりましたが、感想を。

是枝監督作品「Distance」では、
あまりの難しいボールにどう対処していいのかさっぱりだった私ですが、
今回は見事に受け止めることができたように思います。
そのぐらい優しいボール。とてもキレはありましたが。

ある家族が帰省した、たった1晩の物語。

夏川さんが見所であげていたオープニングからして、引き込まれました。
まな板と包丁の音。朝食の匂い。言いたい放題の母娘の会話。
そんな母娘の家族である頑固な父親に調子のいい娘婿。
そこへ帰省した小心者の次男と子持ち再婚した嫁とクールな子供。
若干、出てくる人たちがいかにもプロトタイプ過ぎな感じもしなくもないけど、
そんなことは忘れさせるに十分なほどに計算尽くされた感がありました。

物語が進むにつれ、この家族を襲った過去が少しずつ明らかに。
そして、家族の裏表や怖さがチラホラ。
といっても、どの家族にでも多少思い当たることがあって、
あぁ、そうだよな、家族ってって気づかされることが多く。
たとえば、娘婿が「直しますよ」と言ってた風呂のタイルを直さず帰ってしまうと、
母親は「いつもそうなのよねぇ」ってお風呂入りながらつぶやいてたり。
な~んかとてもリアル。
最後の阿部ちゃんの台詞にも表されている通り。
「いつもちょっとだけ間に合わない」
それがいいとか悪いとか言ってるわけではなく、
これを見て親孝行しようと呼びかけているわけでもなく、
そういう感じが家族なんだろうなって。

ほんと、特に何もない何気ない1日。
あるとすれば、長男が自分の身を持って助けた少年(青年)にとっては、
毎年毎年、緊張する1日だろうというのと、
次男の嫁の子・あつしにとっては、何かを感じる1日だったろうということ。
 (このあたり、是枝さんも”成長しているとすればあつし”とパンフに書いていて、
 それを読む前に感じることができたので、若干嬉しかったりして。
 だって、是枝さんの意図が読み取れないことが多いので、
 ひっさしぶりに読み取れたわ~って思ったもんで・・・)


この映画観てて一番驚いたのは、この映画のタイトルが
「ブルーライト・ヨコハマ」から来てたってことぐらい。
いや、まさか、そこから?って映画観ながら思っていたら、
パンフでもOCNのインタビューでもそうだとなってて。
でも、これが一番びっくりしたことですから、
いかにこの映画でびっくりすることがないかという。

確かにびっくりすることはないけど、
丁寧なとてもいい映画だと思いますよ。
夏川さんの何番目かなぁ?代表作の一つにはなったと思います。

でも、こんな映画、撮ろうと思うってこと自体、
よほど脚本力に自信がないとと思うんですよ。
あと、役者の力がかなりないと難しい。
実際、この映画の最大成功要因は、樹木希林さん。
この人なくして、この映画の良さは語れないでしょう。
阿部ちゃんも夏川さんも良かったけど、
希林さんの前では、まだまだ半人前に見えてしまいそうになるほど。
ほんと、すばらしかったです。
助演女優賞、たくさん取るんじゃないでしょうか?

あと、YOUも流石でした。ってか、素でした。
by acaciawalk | 2008-07-08 23:15 | yui